小学生の時、母親に連れられて母の女学生時代の友人のお宅にお伺いしたことがありました。私と3歳違いのお子さんと、俄か親友となった私は、「そろそろ帰るわよ!」という母親の声に、「いやだ、いやだ!」と駄々を捏ねました。「もっと遊びたい!」親友の応援が続きます。子どもたちの作戦は大成功!その日はそちらのお宅に泊まることになりました。
翌朝の朝食の時、その事件は起こりました。白いご飯にお味噌汁、ここまでは我が家の食卓と何ら変わりません。問題はそれに続いて出てきた黄色い粉です。お皿に盛られた黄色い粉、その正体は"黄な粉"でした。「黄な粉?一体何をするのだろう?」我が家ではご飯、お味噌汁、そのあとに続くのは、目玉焼き、魚の塩焼き、ところが"黄な粉・・・"
そして次の瞬間、私は眼を奪われたのです。なんと、そちらのお宅では全員、黄な粉をご飯にたっぷり振り掛けてパクパク食べ始めたのです。しかも大変美味しそうに。
「やっちゃんも食べる?」と言われて思わず「うん」と言ってしまった私の茶碗一杯に振り降り注がれた黄な粉、「どう、美味しいでしょう。」と言われて、必死になって飲み込んだ私なのでした。友人宅での黄な粉のおもてなし、それは8歳の子どもにはほろ苦い経験となったのでした。
あれから40年以上経ちました。しかし、あの時、皆さんが美味しそうに黄な粉ご飯を食べていた笑顔は、いまだに私の瞼に焼き付いて離れません。テーブルの色、テレビの番組、今でも鮮明に覚えています。
"記憶に残る空間で人をもてなす。" 私たち日本人が長い年月をかけて培ってきた日本の伝統的住文化は、こうした"黄な粉によるおもてなし"の積み上げではないでしょうか。
時代は変わっても、わたしたちのプリンシパル(原理・原則)は変わりません。"デザイン"と"最先端技術"の融合により、このプリンシパルを21世紀の現代社会に継承していくことが今求められているのだと思います。
平成20年5月27日
四十万 靖